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2005年07月08日
会計士と不正
大阪の弁護士のmomochin007さんから、トラックバックいただいていました問題に、いち会計士としてお答えいたします。けやきの管理者です。
(momochin007さん、いつもご愛読ありがとうございます。今日は実は大阪に行っていました。昼過ぎは、大粒の雨が降っていて、傘を持たない私は、不安でしたが、夕方は晴れましたね。(^_^))
実は、この「不正」の問題ですが、一部(?)のメディアの報道の問題か、会計士がまるで「不正」の発見を行う、番人みたいに書かれていますが、会計士が関与する「不正」というのは、あくまで「財務所表の虚偽表示の原因となる不正」に限られます。
私も、受験時代に勉強したことですが、会計士の責任は、財務諸表の適正性について意見をすることであり、不正の発見は、あくまで『副次的』な目的であるとされてきました。
しかし、主目的である「財務諸表の適正性に関する意見表明」についても、不正の問題を抜きにその任務を完遂することはできません。
もしできるのであれば、「この財務諸表は、不正の可能性を除き、適正と認める」という文言となってしまいます。(-_-;)
これでは、投資家は財務諸表が適正なのか、どうか分かりませんし、会計士も職務を全うできないでしょう。
会計士の関与する不正の問題は、監査基準のひとつである、「監査基準委員会報告第10号 不正及び誤謬」で扱われていますが、それにによると、会計士の扱う『不正』というものは、以下の2つです。
・ 不正な財務報告(いわゆる粉飾)
・ 資産の流用
・ 資産の流用
非常に、あっさりしています。
しかし、両社とも会計士でもわかるレベルのものです。
「資産の流用」については、複雑なものであると分かるかわかりませんが、・・・(^_^;)
とりあえず、会計士の考える資産の流用は、いわゆる、実査、立会、確認といった一般的な監査手続きで、要するにモノが”有る”か、”無い”かです。
「資産の流用」については、複雑なものであると分かるかわかりませんが、・・・(^_^;)
とりあえず、会計士の考える資産の流用は、いわゆる、実査、立会、確認といった一般的な監査手続きで、要するにモノが”有る”か、”無い”かです。
逆に、取締役の行為自体の不正(業務不正)といったものは、監査役さんの業務監査の範囲だと思われます。
例えば、業務監査上の不正、取締役が回収の見込みのない親族の会社に対して融資を行う、こういった行為についてあは、監査役としては、背任罪として、取締役に会社に対する担保責任を請求することができるかもしれませんし、それが、業務でしょうが、会計士にとっては、これは、不正ではありません。
要は、融資実行後、すぐに貸倒引当金を計上してくれさえすれば、会社の財務諸表上は適正な処理ですからね。(ただし、取締役への請求をどう捉えるかは、微妙なところですが、とりあえず取締役から入金が確実となっても、勘定科目的には、「未収入金」であり、「貸付金」ではないですね。)
といった、具合で、ちょっと、世間が考える「不正」の概念とは、ずれています。
その点、法律の専門家ではない、「会計士が、『不正』を防止」と、メディアでは書かれていますが、ニュアンスのズレが生じている要因だと思います。
ほか、SOX法404条においても、同様です。
私たちも、日本を代表するグローバル企業の、SOX法対応のための内部統制コンサルティングを行ったことがありますが、やはり、不正の範囲は、「財務報告目的」のみに限られます。
ということで、一部(?)のメディアの報道の「不正」のニュアンスと、会計士が自分たちの職務として果たすべき「不正」のニュアンスが異なっていること、このことを世間にも認識していただきたいところですね。(^_^;)
せっかく、トラックバック記事を頂いているので、私見の範囲でお答えいたします。
momochin007さん
『不正防止、という意味ともからんでくると思うのですが、「なんかおかしい」と思ったときに「適正意見を表明できない」ということで足りるのか、それとも「これはおかしい、粉飾だから摘発します」ということまで積極的に糾弾すべきなのか、そのあたり会計士さんかたはどのように考えておられるのか、すこし興味があります。』
『不正防止、という意味ともからんでくると思うのですが、「なんかおかしい」と思ったときに「適正意見を表明できない」ということで足りるのか、それとも「これはおかしい、粉飾だから摘発します」ということまで積極的に糾弾すべきなのか、そのあたり会計士さんかたはどのように考えておられるのか、すこし興味があります。』
この点については、
「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)』に以下の記述があります。
第8条 会計監査人がその職務を行うに際して取締役の職務遂行に関して不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重要な事実があることを発見したときは、その会計監査人は、これを監査役会に報告しなければならない。』
ここでのポイントは、「重要な事実」と「発見したとき」ですね。
ちなみに、ここでの「不正」は、おそらく世間一般の方が考えられている、「業務上の不正」です。
「重要な事実」は当然、財務諸表にも影響を与えます。例えば、総資産の100分の1基準といった、それぞれの監査人が定めている、数量的なもの、または、定性的な基準に照らして、その重要性を判断することでしょう。
続いて「発見したとき」とあるのは、あくまで不正の発見が「副次的目的」であることを表しているとされています。
新会社法でも第397条で同様の取り扱いとなっているようです。
で、ご質問の『「適正意見を表明できない」ということで足りるのか』ですが、このような場合は、会計士は、必ず追加監査手続きを実施して、監査証拠を集めていきます。おそらく時間いっぱいまで使うでしょう。
それでも、監査意見の心証を得ることができない場合は、その重要性を加味して、「範囲限定をして意見を表明する」か、「意見を差し控える」かになります。
不確かな段階で「不適正意見(不適法意見)」を表明することはありません。
続いて糾弾の件ですが、会計士が直接糾弾することはありません。
あくまで、上記の条文を用いて、監査役への報告となります。ちなみに、新会社法には、「遅滞無く」という文言が入っているようです。
momochin007さん
『といいますのも、新会社法が施行されますと、大きな会社の会計監査をされる方は、外部委託者ではなく会社の機関となるわけで、これまでとは企業経営者との「距離感」が変わってきますよね。(中略)つまり、会社の表明している数字や、その算定根拠、監査証拠の信用性、そして事業の将来見込みなど、どんな根拠から「適正とは表明できない」と考えたのか、その理由を根拠立てて(素人にわかりやすく)説明する必要が出てくるのではないでしょうか。』
『といいますのも、新会社法が施行されますと、大きな会社の会計監査をされる方は、外部委託者ではなく会社の機関となるわけで、これまでとは企業経営者との「距離感」が変わってきますよね。(中略)つまり、会社の表明している数字や、その算定根拠、監査証拠の信用性、そして事業の将来見込みなど、どんな根拠から「適正とは表明できない」と考えたのか、その理由を根拠立てて(素人にわかりやすく)説明する必要が出てくるのではないでしょうか。』
この辺は、新会社法では、会計士が総会の表に出るケースが予想されますね。(今までは、総会の横の控え室で、会場を見守っているだけでしたが。)
ただ、momochin007さんがご心配されるような、説明責任についてのご心配は、通常のBig4といったレベルであれば、非常に困難な”審査”というものがあるので、そこでの答弁で切り抜けれるでしょう。
(中小の監査法人のみなさん、個人の会計士の先生すみません。他知らないもので、・・・m(__)m )
そもそも、会社と意見を違えて、最後まで突き通す件というのは、監査法人内でも、何度も何度も審議を重ね、それこそ、徹夜で資料を作成して、誰がみてもおかしくない、説明が可能な状態になって、初めて表明されるからです。
これは、監査とういう仕事が、「リスクに”のし”を売る」仕事である限り、その辺は、厳密です。
また、株主との距離の話ですが、会計士は、そもそも、市場及び株主のために、存在しているものであり、経営者とはある意味「敵対関係」ですね。
よって、会計士が、監査するときは、常に「株主がこの情報を参照して、誤解することは、ないか?」その視点を常に持っていると私は思っています。
また、不適正意見、意見差控えによる上場廃止の問題ですが、これは、あくまで結果的に、そういった状況になるということであり、会計士が、経営者がそれを恐れるのと同様に、それを恐れてしまっては、監査は全て「適正意見」のみになってしまいますね。(^_^;)
市場には、ある程度の”浄化”も必要なのかなと思います。
その浄化機能の一つが、会計監査でもあるのですね。
その浄化機能の一つが、会計監査でもあるのですね。
最後に公認会計士法の第一条ですが、
『公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の構成な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図りもって国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。』
非常に立派ですが、難しすぎですね。(^^ゞ
By 監査を廃業した会計士(けやき通り会計事務所)
投稿者 kuni01 : 2005年07月08日 01:46
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コメント
たいへん丁寧いご回答いただき、ありがとうございました。(このようにエントリーを立てて回答いただくのは2回目ですよね? なんか申し訳ないかぎりです。)私は一部報道にあるように、会計士の職責が変わるほどに「不正」摘発の使命を会計士さん方が(とりわけ監査に携わる方が)負担されるのではないか、と思っていましたが、実際のところを整理立ててご説明いただき、納得いたしました。ただ、このあたりは、たいへん興味のあるところでして、実際にも最近の企業会計審議会、内部統制部会にも、日弁連の副会長さんが参考人として意見を述べておられるところなんで、今後ももうすこし研究してみたいと思っています。今後とも、どうかよろしくお願いいたします。
投稿者 momochin007 : 2005年07月08日 12:39


