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2005年06月11日
会計よもやま話�〜会計基準をめぐるタタカイPART2
先日掲載しました、『会計よもやま話�〜会計基準をめぐるタタカイ』につきまして、トラックバックをいただき、ありがとうございます。マニアックすぎることを書いていないか常に不安の中で書いていますので、議論の視点を提供できたとすればそれだけで励みになります。
さて、良い機会なので、ヘッジ会計ということについて、少し踏み込んで書きたいと思います。
そもそも、会計基準は、デリバティブ取引について、基本的に投機(!?)を目的としているという考え方にたっています。乱暴すぎるかもしれませんが、誤解をおそれずにいってしまえばバクチだと考えているわけです。そして、我々はこのバクチの結果が出てしまう前に、一定のロジックに基づいて、勝ちそうか負けそうか知ることができます。デリバティブの『時価』 のことです。
デリバティブが投機目的であり、そのの結果を事前に知ることができるとすれば、これを開示することが、将来情報を望む投資家からみるとありがたいでしょう。そこで、デリバティブは原則として時価評価し、時価評価の結果を損益処理することが求められるわけです。
ところが、デリバティブ取引はなにも投機目的のために利用されるだけではありません。会社がリスク資産を保有している場合に、そのリスクを軽減する効果を持つことがあります。
典型例はこうです。
会社が、常時、外国の商社から商品を輸入しており、ドル建てで支払う約束をしていたとしましょう。この場合、会社が持つ外貨建債務は為替変動リスクにさらされています(1$=100円よりも1$=110円のほうが不利)。
そこで、会社は将来発生する外貨建債務に関する為替変動リスクを軽減するため、銀行との間で、外貨建債務の発生見込額を1$=100円でドルにかえる約束(=デリバティブ取引)をしておくのです。そうすると、会社としては1$=90円となることによって得られる利益を放棄するかわりに、1$=110円となることによって生じる損失を回避できるわけです。
このようなデリバティブ取引は、将来発生する為替損益を軽減する目的で行われるものですから、その意図を会計処理に反映させなくては、逆に投資家をミスリードする可能性があります。
そのため会計基準は『ヘッジ会計』という工夫をしています。それは、ヘッジ対象(=将来発生する予定の外貨建債務)から得られる損益とヘッジ手段(=当期行ったデリバティブ取引。)から得られる損益とを同一期間に認識する工夫です。
先ほどの例でいいますと、『当期』に行ったデリバティブの時価評価結果を損益として認識せず、外貨建債務が発生し為替変動損益が生じる『来期』 まで、その損益を繰り延べることになります。
ところが、会計監査人の立場としましては、『会社の意図』というものを確かめなくてはなりません。なぜなら、ヘッジ会計は損益を繰り延べるものであるため、これを利益操作に利用されかねないからです。
例えば、10年間にわたって1$=100円で邦貨を外貨に交換する約束を銀行との間でしていた場合に、当期末において時価がかなりのマイナスであるとすれば、業績の苦しい会社は、本当は投機目的で行っている取引であったとしても、『これは将来発生する外貨建債務のために行ったデリバティブ取引であり損益はそのときまで繰り延べたい』というでしょう。私が経営者でもそういいたくなります。
また、たとえ、今現在外国企業との取引があったとしても、これだけ変化の早い経済環境において長期に(10年間なんて気の遠くなる話です。)輸入取引が継続することを立証するのはかなり困難です。取引が中止された場合、邦貨を外貨に交換する取引は、そもそもリスクを軽減する対象(=ヘッジ対象)が存在しないわけですから、会計上単なるバクチとしての性格を持つにすぎないことになります。
この『会社の意図』の判断指針を示したものが例の『包括長期為替予約のヘッジ会計に関する監査上の留意点』(リサーチセンター審理情報No19)です。このなかで、1年以上の予定取引については、一定の場合を除いて、ヘッジ対象とは認められず、原則として会計処理上は投機目的と考えて損益処理する必要があると示しています。
もっとも、これはヘッジ対象となる為替予約取引が将来発生するかどうかの予測にあたっての判断指針を示したものにすぎませんから、極端にいえば10年、20年先のことであったとしても、予測を裏付ける合理的な根拠を会社側が示した場合、損益の繰延処理を否定する理由は会計士側にはありませんし、この判断指針もそこまで否定していません。
つまり、この判断指針が出されたからといって、包括長期為替予約を全て損益処理しなければならないということではなく、将来の外貨建債務の発生可能性について会社の実態を見て判断しなければならないということです。
判断指針が出たから、損益処理しなければならないというロジックがクライアントから理解を得られないのは当然ですし、そもそも今までの処理はなんだったんだということになりかねません。
私が尊敬する先輩からよく言われたことは、『会計基準から実態をみることをするな』『実態から会計基準をみなさい』ということでした。会計基準は企業の取引実態を写し出すカガミにすぎないのですから!
今回は長くなってしまってすみません。
投稿者 a005547 : 2005年06月11日 18:13
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コメント
トラックバック、ありがとうございました。また、たいへん貴重なご意見をいただき、このテーマに関する次のエントリーへの参考にさせていただきます。まだ、十分理解できていない部分もありますので、もうすこし理解のためのお時間を頂戴したいと存じます。あの平成17年2月28日東京地裁判決の事例は、企業会計という分野に携わる方々が双方に登場してくる、ある意味「専門分野」に属する論点を「司法の場」でどのように扱うのか、というたいへん興味のある裁判なんで、今後も法律家の立場、監査役の立場からフォローしていきたいと思っています。今後ともご教示のほど、よろしくお願いいたします。
投稿者 momochin007 : 2005年06月12日 02:26
こちらこそ大変勉強させていただきました。われわれは、会計/財務という限られた分野にとどまることなく、より広い視野を持たなければならないと考えています。その意味で、われわれの方にこそ、法律家の立場、監査役の立場からのご意見は大変貴重なものです。今後ともご意見を寄せていただきますようよろしくお願いいたします。
投稿者 a005547 : 2005年06月12日 21:21
こちらこそ大変勉強させていただきました。われわれは、会計/財務という限られた分野にとどまることなく、より広い視野を持たなければならないと考えています。その意味で、われわれの方にこそ、法律家の立場、監査役の立場からのご意見は大変貴重なものです。今後ともご意見を寄せていただきますようよろしくお願いいたします。
投稿者 a005547 : 2005年06月12日 21:22


